アトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎は増悪と寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主な病変とする疾患で、患者さんの多くはアトピー素因を持っています。アトピー素因とはIgE抗体を産生しやすい体質のことです。

アトピー性皮膚炎の病態

アトピー性皮膚炎にはダニや花粉といったアレルゲンに過剰に免疫が反応してしまう、アレルギー性の皮膚炎と皮脂が少ないことで皮膚のバリアを保てず乾燥してかゆみが起こす非アレルギー性の皮膚炎とに分けられます。

アレルギーによるもの

アレルギーによるものは主にⅠ型アレルギーによるものとⅣ型アレルギーによるものとがあります。

Ⅰ型アレルギー

卵・大豆・牛乳・サバ・ダニ・花粉などの抗原が存在するものです。ヒスタミンなどの炎症物質が出たりします。

Ⅳ型アレルギー

接触型アレルギーです。Tリンパ球が関与しているといわれています。

非アレルギーによるもの

アレルギーがなくてもアトピー性皮膚炎になることがあります。

原因としては角質間脂質であるセラミドの合成阻害です。角質間脂質とは皮膚表面の細胞の間にあって皮膚の乾燥を防ぐために分泌される脂のようなものです。皮膚のバリア機能の低下、皮脂膜が少ないことで起こります。外からの物質が角化細胞を刺激し炎症物質であるサイトカインが放出されます。

アトピー性皮膚炎の主な症状

アトピー性皮膚炎の主な症状は痒みです。また嗜好的掻破行動が起きます。掻くから痒い、痒くなくても掻くという物理的刺激が角化細胞を刺激して炎症を引き起こし、かゆみが起こります。

アトピー性皮膚炎の一般的な治療法

スキンケア生活環境の改善を行います。どうしても皮脂膜が形成されにくくなりますので、刺激の強い石鹸などはだめです。普通の石鹸、または弱酸性の石鹸を使うようにしましょう。アトピー性皮膚炎の方に向けて作られた製品もあるようです。

また、低刺激の化粧水やクリームなどで保湿し皮膚のバリア機能を高めるようにしましょう。

生活環境の改善はハウスダスト、ダニなどを極力排除することです。まめに掃除をしたり、カーペットや畳よりフローリングの方が良いです。また、ぬいぐるみ、枕、布団などを日光に当て、その後掃除機で吸うと効果的です。

UV-Aを浴びると効果があるといわれており、冬の日光を窓越しに浴びるとよいでしょう。

薬物療法

薬物療法は詳しくは書きませんが、ステロイド外用剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤などが処方されます。ステロイド薬は年齢・部位・症状・炎症の度合いによって強さを5段階に分けて処方されます。

アトピー性皮膚炎の鍼灸治療

アトピー性皮膚炎の鍼灸治療は東洋医学的アプローチによって行います。

一言でアトピー性皮膚炎といっても東洋医学では症状の出方によって次の4つに分類できます。

  1. 風熱
  2. 風湿
  3. 風寒
  4. 気血両虚

風熱

乾燥と赤みが強く、時に粉をふいたような状態になります。

症状は激しく、あるいは急激に変化します。青壮年に好発します。温める、辛みの強いもの、熱いものを食べると悪化し、冷やすと楽になります。

経穴
曲池(きょくち)
大椎(だいつい)
風池(ふうち)
隔兪(かくゆ)
血海(けっかい)

などを中心にツボを選んでいきます。

風湿

掻きむしることで、滲出液を伴うじくじくアトピーです。

症状は激しい、または急激に変化します。青壮年に好発します。四肢の重だるさなどがあります。飲食の不摂生により悪化します。

経穴
中脘(ちゅうかん)
三陰交(さんいんこう)
豊隆(ほうりゅう)
脾兪(ひゆ)

などを中心にツボを選びます。

風寒

皮膚は乾燥し、時に冷たくなります。

症状は急に出現します。寒冷刺激が誘因や悪化因子となります。悪寒や鼻水、鼻づまりなどが伴います。

経穴

陽池(ようち)
足三里(あしさんり)
風池(ふうち)

などを中心にツボを選んで治療します。

気血両虚

皮膚は白く、乾燥傾向です。

症状は軽度ですが、反復しやすいです。顔色が冴えない、疲れやすい、食欲不振などが伴います。

経穴
合谷(ごうこく)
気海(きかい)
腎兪(じんゆ)

などを中心にツボを選んで治療していきます。

成人型アトピーの患者さんは肩こりや冷え症などの様々な不定愁訴を持つことも多いので、体全体の調節ができる東洋医学的なアプローチが必要となります。

痒みのツボ

痒みの特効穴に「治痒」というツボがあります。腋下横紋前端の高さで肩峰からの垂線と交わるところにあります。指圧や爪楊枝の裏などで刺激をするとよいでしょう。
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