便秘について
便秘とは、各個人の健康時の状態に比べ排便回数が減少し、水分の乏しい便を数日に一回くらい排出する状態です。
排便の回数はあまり問題にならず、便の中の水分量が非常に少ないことが問題です。
一般的には、便通は24時間ないし48時間に1,2回規則正しくあるのが普通で便秘の人は3日~数日に1回の排便であることが多いです。
便秘の原因
一言に便秘といっても腸管自体の病変や腫瘍などのよる腸管の狭窄症や運動麻痺、内分泌疾患、薬物中毒などによる腸管運動の麻痺による症候性の便秘と、とくにはっきりとした原因が不明な機能性の便秘とに分けられます。
症候性の便秘の場合は病院へ受診しなければなりません。
多くの方にみられる機能性の便秘は3つに分類できます。
- 弛緩性便秘
- 直腸性便秘
- 痙攣性便秘
です。
弛緩性便秘
アウエルバッハ神経叢の興奮性の低下のために、大腸の運動と緊張が減弱し、腸内容が停滞し水分の吸収が増し、便が硬くなり排便の時間が遅れるものをいいます。
食べる量が少ないことによる腸への刺激低下や生理現象としての加齢による腸運動、分泌機能の低下などによっておこります。
特徴的な症状は腹部の膨満感です。消化器症状だけでなく、頭痛、めまい、倦怠感などを訴えることも多いです。
直腸型便秘
排便の習慣が乱されたことによって起こる習慣性の便通異常です。骨盤神経を介する排便反射が減弱または消失しているものです。
長年の習慣による排便反射の抑制のために反射機能の減弱や、浣腸の濫用、神経疾患、外傷などで起こります。便意を催しても我慢してしまう人に多いです。
痙攣性便秘
腸管が過緊張であるため、分節運動が強く移送運動が遅くなり直腸までの移送時間が極度に延長している状態です。
腸管運動不調和のため、糞便が硬糞塊を形成し、排便が毎日あっても固くコロコロとしたウサギのような便(兎糞便)になります。過敏性腸症候群のときにみられます。
痙攣性便秘の特徴は腹痛、特に左腹部、下腹部の痛みを訴え、排便により軽快する傾向があります。
弛緩性便秘 | 痙攣性便秘 | |
便の性状 | 硬くて太い | 兎糞状、軟便 |
粘液の排出 | 少ない | 多い |
腹痛 | なし | あり |
心理的因子 | なし | あり |
特徴 | 高齢者、妊婦に多い | 若者、壮年期に多い |
便秘の治療
治療方針は弛緩性の便秘の場合は腸運動の推進力の増強、痙攣性便秘の場合は運動リズムの調整、直腸性便秘の場合は排便反射の回復を行うことになります。
規則正しい排便習慣をつけましょう。
食事療法としては便意を催させる食事、すなわち食物繊維の多い食べ物、脂肪の多い食べ物をとるようにしましょう。
痙攣性便秘では刺激の少ないものを摂取するようにしましょう。
排便に関与する筋肉の筋力低下を補うために腹筋運動、痙攣性便秘では心因性であることがおおいのでストレスを取り除くようにしましょう。
便秘に対する鍼灸治療
便秘に対する鍼灸治療は東洋医学的なアプローチとなります。
便秘は東洋医学では大便秘結といい次の5つが主な原因として挙げられます。
- 実熱
- 気滞
- 気虚
- 陽虚
- 血虚陰虚
実熱
熱邪が陽明の胃府に侵入し津液を損傷し、いちょうが乾燥して便秘となります。
大便は乾燥して兎糞状、熱症状、小便は濃く少量、顔面紅潮、口臭がきつくなったりします。
気滞
肺の宣発・粛降作用の失調により胃気上逆や大腸の気滞を生じ便秘となります。ストレスなどによる肝気の鬱滞でも生じます。
大便がスムーズに出なくなります。抑うつ感、胸のつまり、げっぷ、吐き気、などがします。
気虚
肺虚、脾虚などによって大腸に津液がいきわたらないことで起こる便秘です。高齢者や弛緩性の便秘に多くみられます。
大便の状態は正常ですが、排便力がないです。じっとしていても汗をかいたり、息切れ排便後の疲労感などが起こります。
陽虚
脾、腎の陽気の不足によっておこります。高齢者の方や女性に多くみられます。
排便困難となります。小便は薄く多い、四肢の冷え、おなかが冷えると痛くなりやすい、腰の冷えなどがみられます。
血虚陰虚
熱病後や失血性疾患、産後による血・津液の不足によって大腸が乾燥することでおこります。
大便が乾燥し硬く出ない、口が渇く、やせ、顔色に艶がない、めまい、動悸、不眠といった症状がみられます。
鍼灸治療では問診や触診、脈診などにより東洋医学的にどこに問題があるのかを確認し、患者様一人ひとりにあったツボを選び鍼またはお灸をしていきます。