性機能障害 EDについて
従来使われていたインポテンツという言葉は患者様にとって屈辱てきな響きが強いために、最近では勃起障害(erectile dysfunction=ED)という言葉におきかえられてきていますが、近年では性行為自体を全体的なものとしてとらえ、性機能障害(sexual dysfunction)という広い概念で扱われることが多くなってきています。
性機能障害とは性欲、勃起、性交、射精、オーガズムのいずれか一つ以上欠けるか、もしくは不十分なものをいいます。
日本の性機能障害患さんの数は980万人以上といわれています。
勃起障害とは男性性機能障害のうちの一つで、性交時に有効な勃起が得られないために満足な性交が行えない状態で、通常性交のチャンスの75%以上で成功が行えない状態をいいます。
勃起と射精のメカニズム
勃起は陰茎皮膚への刺激あるいは脳への視覚、嗅覚、聴覚のシグナル→脊髄勃起中枢→陰茎流入動脈の拡張による流入血流量の増加→陰茎海綿体洞の弛緩・充血→流出静脈の圧迫による流出血管抵抗の増大により完成される神経血管現象です。
射精は陰茎皮膚への刺激あるいは脳への視覚、嗅覚、聴覚へのシグナル→脊髄射精中枢→精液の後部尿道への排出・内尿道口の閉鎖→後部尿道から体外への射出となります。
性機能障害の分類
男性の性機能障害は、何らかの理由で勃起・射精に関する経絡のうちのどこかが機能的あるいは器質的に障害されることにって起こります。
機能性勃起障害
勃起機能は正常ですが、「ダメねえ」などの女性のショッキングな一言による心理的な要因などにより性交ができないものを指します。機能性勃起障害の原因の代表的なものにうつ病があり、約半数といわれています。
心理療法(精神療法、行動療法)あるいは抗うつ剤、血管拡張剤などの薬物治療を行います。
器質性勃起障害
陰茎の支配神経、血管、組織などの障害や糖尿病などの内分泌しょうがいにより、充分な勃起が得られず、性交ができないものを指します。
勃起補助具や外科的手術が用いられます。
混合性勃起障害
器質的要素と機能的要素が混在するもの、あるいはどちらとも確定できないものを指します。
その他薬物や脳幹障害や人工透析によるものなどがあります。
EDの治療
一般的な治療方法としては、バイアグラ、ビタミン剤、漢方薬、抗うつ剤などの薬物療法や心因性の勃起障害の場合は心理療法としてカウンセリングなどを行います。
そのほかには陰圧式勃起補助器具などが用いられることもあります。
勃起障害 EDの鍼灸治療
勃起障害には東洋医学的アプローチを用いて行います。
EDのことを東洋医学では「陽萎」といいます。陰茎の勃起が不全あるいは勃起が持続しないために性行為ができないことをいいます。
「早漏」と陽萎は異なります。早漏は勃起はするが、すぐに射精してしまい、勃起が持続しないために正常な性行為が行うことが出来ません。
一方、陽萎は勃起が不全で性交不能を指します。
勃起障害は次のような原因が考えられます。
腎陽虚
陰部の冷え、腰痛、足腰に力が入りにくい、耳鳴り、脱毛、冷え、痩せ、めまい、ふらつきなどの症状が現れます。
腎陽虚の陽萎は性欲過度による房事過多や先天的に虚弱体質の人が性交または青少年の手淫過多などにより腎気を消耗したために起こります。
経穴
関元(かんげん)
太谿(たいけい)
復溜(ふくりゅう)
陰交(いんこう)
気海(きかい)
命門(めいもん)
などのツボを中心に鍼灸治療を行います。
心脾両虚
動悸、息切れ、じっとしていても汗をかく、痩せ、元気がない、食欲不振、軟便などの症状が現れます。
心配事、思慮過度の為に心脾が障害され、脾気、心血が消耗し、後天の化源が不足するために腎気が充足せず腎精が不足し陽萎が発生します。
経穴
太白(たいはく)
三陰交(さんいんこう)
中脘(ちゅうかん)
血海(けっかい)
神門(しんもん)
などのツボを中心に鍼灸治療を行います。
驚恐傷腎
びくびくして驚きすく不安である、元気がない、眠りが浅い、多夢、平常時は勃起するが性交の段階になると焦りや不安の為に勃起しないなどの症状がみられます。
驚き、恐れなどの精神的緊張することにより、腎気が不足し陽萎が発生します。
経穴
内関(ないかん)
曲沢(きょくたく)
復溜(ふくりゅう)
然谷(ねんこく)
などのツボを中心に鍼灸治療を行います。
湿熱下注
陰部が湿潤して痛みや痒みがあります。尿が濃く、両は少なくなります。
肥満して内湿が盛んな人が脂っこいものを多食し、酒を飲むことで湿熱が発生し、脾胃に停滞します。その湿熱が下焦に及んだために発症します。
経穴
中極(ちゅうきょく)
太谿(たいけい)
陰陵泉(いんりょうせん)
下巨虚(げこきょ)
などのツボを中心に鍼灸治療を行います。
近年では過労、ストレスによるEDも増えてきています。生活の質にも影響します。
しかしながら、恥ずかしいことから誰にも相談できない人がいるのも事実です。
ツボを利用して体の内部の環境を整える鍼灸治療によって改善することが多い症状ですので、EDでお悩みの方はお気軽にご相談ください。