股関節の痛みについて

人間は2足歩行をするので、膝関節・股関節に大きな負担をかけて生活することになります。

とりわけ股関節を傷めると歩行・階段の上り下り・立つ姿勢が困難になるため、日常生活動作を非常に低下させる要因となります。

股関節の痛みには大きく分けて慢性的な痛みと急性的・亜急性的な痛みに分けられます。

慢性的な痛みの原因となるものの代表的な例としては、変形性股関節症が挙げられます。一方急性・亜急性的な股関節の痛みの出るものは恥骨結合炎が考えられます。

変形性股関節症

変形性股関節症は股関節の臼蓋および大腿骨側の療法の関節軟骨が老化などに伴う退行性変性に陥り、過剰に生体防御反応が起こることで骨棘の形成、軟骨下骨の硬化、骨嚢胞の形成などが起こり、疼痛、跛行拘縮をきたす疾患です。

変形性股関節症の原因としては、基礎疾患がなく原因が不明または老化に伴う一次性変形性股関節症と先天性股関節脱臼・臼蓋形成不全・ペルテス病・骨折後などの疾患後に好発する二次性変形性股関節症に分けられます。

約9割が二次性変形性股関節症といわれています。特に基礎的な原因として多いものが臼蓋形成不全となります。

変形性股関節症の症状

症状としては歩いた時の痛みや椅子などから立ち上がる際の痛みが主となります。

疼痛部位は股関節周囲にとどまらず、おしり、太もも、膝の上などに訴えられることもあります。初期には痛みが軽度ので違和感程度であっても、症状が進行するにしたがって、股関節周囲の疼痛、さらには動作開始時痛、足を引きずるなどの症状がみられ、杖が必要となったり、日常生活に不自由を伴います。

臨床所見としてはお尻の筋肉の委縮・股関節の関節可動域の異常・脚長差などがみられることが多いです。

変形性股関節症の一般的な治療

変形性股関節症は鎮痛剤による疼痛のコントロール、股関節周囲の筋力の低下を防ぐための筋トレなどを行います。また疼痛時には股関節にかかる負荷を免荷しなければなりませんから、杖の使用、体重の減量を行う必要があります。

しかし、関節可動域制限が高度な場合・関節の変形が高度な場合・大殿筋や中殿筋の委縮が高度な場合・日常生活が著しく不自由な場合など末期の場合は人工関節全置換術が有効な手段となります。

変形性股関節症の鍼灸治療

鍼灸治療は股関節周囲の消炎・鎮痛・筋緊張の緩和を目的に行います。痛みが強い症例に対しては低周波置鍼療法を行います。

よく用いられる経穴としては髀関・衝門・足五里・陰廉などが挙げられます。

恥骨結合炎

恥骨結合縁とは内転筋、腹直筋等の牽引力によって恥骨結合付近を中心とする部位に痛みを訴えるものをいいます。

サッカーやラグビーなどの強いけりや陸上競技などの着地動作の繰り返しにより、恥骨に付着している腹直筋・長内転筋などに牽引力が働き病変が引き起こされます。

直接の打撲や股関節内転筋の過伸展より急性に発症する場合と、恥骨結合部に繰り返し起こる力学的ストレスにより亜急性に発症するような場合があります。

痛みは、これらの筋付着部の炎症によるものと考えられます。また炎症が閉鎖神経に影響することで、鼠径部や太ももの
内側の痛みを感じることもあります。

恥骨結合炎の症状

恥骨結合部を中心とした圧痛・自発痛・運動痛があります。また鼠径部・大腿内側・会陰部・陰嚢部に放散痛を訴える場合があります。

股関節を屈曲内転をした際の痛みと股関節を開く際の可動域制限がみられます。障害されるスポーツの代表的なものとしてはサッカーなどのキックで、悪化すると夜間痛が生じることもあります。

恥骨結合炎の治療

急性期にはRICE処置や鎮痛剤などの薬物療法を行い、安静をとることで炎症の鎮静化を図ります。安静が取れない場合は非常に治癒が困難となります。局所への消炎鎮痛剤の注射も行う場合があります。

疼痛の経過を見ながら開脚運動、スクワット、ランニングなど運動の幅を広げながらリハビリをしていきます。

恥骨結合炎の鍼灸治療

鍼灸治療は消炎鎮痛を目的とした恥骨結合部への治療と股関節内転筋や腹直筋の緊張が強い場合は該当筋に対する治療を行います。

圧痛部を中心に、凝り・しこりなどを目安に疼痛部に置鍼や単刺などの鍼治療を行います。場合によっては置鍼したうえで10~15分程度の通電を行うこともあります。

痛みの原因が内転筋や腹直筋などの筋肉性の要素が強い場合は比較的早く効果が現れますが、恥骨結合周囲の炎症が強い場合は時間がかかることがあります。とくに安静時痛や会陰・陰嚢部の放散痛を認める場合、運動の休止、アイシングを鍼灸治療と併用することが必要不可欠となります。