変形性膝関節症について

膝関節を構成する組織に慢性の退行性変化と増殖性の変化が起こり、関節の形態に変化をきたす疾患を変形性関節症といいます。
変形性関節症が膝関節で起こった場合、変形性膝関節症といいます。

中高年以上の年齢層に多くみられ、男女では女性の方が多くみられます。25%~40%が症状の有無にかかわらず、変形性膝関節症の病態変化おこっています。正座をすることが多い人や、肥満体型の方は膝にかかる負荷が大きくなるため変形性膝関節症になる可能性が高くなります。

原因は明らかなものが認められなく発症する一次性のものが80%です。関節の外傷や骨折、リウマチなどの原因に続発して二次性に起こるものもあります。

変形性膝関節症の症状の特徴

主な症状としては次の5つがあげられます。

  1. 動作開始時痛
  2. 運動時痛
  3. 関節の腫れ
  4. 運動制限
  5. 変形

動作開始時痛

朝起き上がるとき、しばらく椅子に座っていた後などに歩き始める際に痛みを訴えます。動かし始めだけ痛くてもしばらく歩いていると痛みが軽減します。これは変形性膝関節症の典型的な症状です。

運動時痛

階段の上り下り、正座時、しゃがみ込み動作などの二座を使う動作で痛みが出ます。

変形性膝関節症が進行するに従い、症状は次のようになります。

初期:動作開始時痛⇒少しの運動で症状が軽減または消失
中期:動作開始時痛+運動時痛⇒動かし始めだけでなく、膝を動かしている間は常に痛い
末期:安静時にも痛みを訴える

関節の腫れ

臨床上みられる腫れは膝の関節の中に水が溜まる関節水腫や膝関節上包の滑膜の肥厚によるものです。炎症が起こっている限りは膝に水が溜まります。よく膝の水を抜くと癖になるといいますが、別に癖になっているわけではなく、膝の炎症が治まっていないので体は良かれと思って水を作りでしています。膝の裏に違和感や腫れがみられるものはベーカー嚢腫です。

運動制限

変形性膝関節症の初期の症状では、腫脹、疼痛によって運動制限が起こります。

膝の軟骨がすり減るなどの関節破壊が進行すると、関節硬縮(関節周りの組織が硬くなる)、関節硬直(関節そのものが硬く動かなくなる)がおこり膝関節の可動域に制限がかかります。

変形

90%はO脚変形、10%はX脚変形を起こします。

O脚変形では膝の内側に負担がかかるために膝の内側に痛みが出ることが多いです。

変形性膝関節症の一般的な治療

変形性膝関節症の一般的な治療は膝関節の炎症を止めること、膝関節周りの筋肉の強化となります。

病院では膝の中に水が溜まっている場合は膝の中の水を抜きます。そしてその後に痛み止めや、潤滑液であるヒアルロン酸膝関節の中に注入します。症状が初期の場合は2~3回の注射で症状がほぼ改善する方もおられます。

膝関節周りの筋肉強化で行われるのはプールでの歩行や空気の入ったボールを膝の間に挟んだり、チューブを使って筋肉トレーニングをしたりします。

変形性膝関節症が進行し、安静時にも痛みが出る末期となった場合には、膝関節を人工関節に変える人工関節置換術などが行われます。

変形性膝関節症の鍼灸治療

変形性膝関節症を鍼灸で治療する際は膝周りの筋肉の血流をよくしたり、膝の炎症を緩和させるための西洋医学的なアプローチ方法と膝関節の異常を五臓六腑の異常ととらえて、全身調整をしていく東洋医学的なアプローチ方法を組み合わせて行います。

西洋医学的アプローチ

膝関節そのものの鎮痛効果と膝関節周囲の筋肉の血流改善を目的に治療していきます。

膝関節痛が存在する場合、鍼灸治療で痛みのコントロールを行い、また運動療法で膝関節周囲の筋力を強化していきます。この2つの方法で痛みの悪循環を断ち切ります。

鍼灸治療は膝関節そのものの痛みの治療も行いますが、運動療法によって発症する筋肉の疲労や痛みなどの症状も鍼灸で治療します。これにより運動療法を痛みや苦痛なく行いやすくすることが出来ます。

鍼灸治療をする際の代表的なツボは次の通りです。

伏兎:筋疲労の緩和
風市:内反変形・O脚による腸脛靭帯の緊張緩和
陰陵泉:膝の内側の痛みの緩和
足三里:膝、下肢の代謝、循環の改善
膝関節内側裂隙部:局所的な鎮痛

東洋医学的アプローチ

膝や肘に限らず関節は「脾」の主りとなります。そのため東洋医学的アプローチはまず足の太陰脾経上の経絡または脾に関連したツボを選び反応が出ているか確認します。ツボの出ている反応によって鍼やお灸など何をするか決めて施術していきます。

また膝関節周囲は足の三陰三陽経が通りますので、内側が痛いのか外側が痛いのか膝の裏が痛いのかを確認しそこにとおっている経絡の手足の先のツボを選んで鍼灸を施すこともあります。