悪心、嘔吐について

悪心とは喉から胸あたりにかけて生じる異常感覚で、それは今にも嘔吐しそうになる不快な感覚です。

一方、嘔吐とは異内容物を食道、口腔を帳じて排出する現象です。

悪心と嘔吐は密接に関係し、悪心は嘔吐の前駆症状になることが多いです。なお嘔吐は通常食欲不振を伴い。唾液の分泌亢進、冷汗、めまい、顔面蒼白など自律神経症状を伴うことがあります。

悪心の発生は腸管の逆蠕動によるとか、胃壁筋の急激な緊張低下によるとか言われていますが、現在のところは不明です。

悪心・嘔吐の原因

悪心・嘔吐をきたす主要な疾患としては

  1. 中枢神経系疾患(脳腫瘍など)
  2. 妊娠悪阻
  3. 神経性食欲不振
  4. 神経症
  5. 消化器疾患 
  6. メニエール病

などが挙げられます。

嘔吐には中枢性嘔吐反射性嘔吐があります。

中枢性嘔吐には、脳の延髄などの嘔吐中枢への機械的刺激による嘔吐(脳腫瘍、脳出血などによる脳内圧亢進)およびCTZによる嘔吐(尿毒症、妊娠悪阻などの内因性中毒によるものと薬物中毒や食中毒による外因性中毒によるもの)さらには神経性食欲不振やてんかんなどによる嘔吐もあります。

一方反射性嘔吐は消化管や腹部内臓からの刺激が嘔吐中枢に伝達されることによっておこる嘔吐で、胃潰瘍など各種の内臓疾患によります。また三半規管などの内耳や前庭器官からの刺激によるもの(メニエール病など)も含まれます。

悪心や嘔吐と一緒に起こる症状によって何が原因なのかだいたい鑑別することは可能です。

腹痛、胸やけ、腹部膨満感などの消化器症状を伴っている場合⇒消化器疾患

腹痛の激しい場合⇒急性膵炎などの急性腹症、イレウス(腸閉塞) 速やかに病院へ受診してください。

頭痛、麻痺、呂律が回らない場合⇒脳腫瘍、脳出血など 速やかに病院へ受診してください。

早朝空腹時の悪心・嘔吐⇒妊娠尿毒症の初期

食欲不振、痩せ、食行動の異常⇒神経性食欲不振

食後数時間以内の悪心・嘔吐⇒食中毒や急性胃炎

発作性の回転性めまい、耳鳴り、難聴を伴う場合⇒メニエール病

東洋医学的にみる悪心・嘔吐の解釈

東洋医学的には悪心・嘔吐胃のは病変で発症するとされています。

  1. 胃寒
  2. 胃熱
  3. 肝胃不和
  4. 傷食

が主な原因です。

胃寒

胃がもともと虚弱あるいは冷たい飲み物やアイスクリームなど冷たい食べ物の過度の取り過ぎによって胃気の損傷によって発症します。

悪心と共に胃痛、食欲不振、泥状便、などを伴います。温めると症状は軽減し冷やすと症状は悪化します。

胃熱

脂っこいものや味の濃いものの偏食などによって胃に熱を生じることで発症します。

呑酸(酸っぱいものがこみ上げる)、臭気のあるげっぷ、便秘などを一緒に伴います。

肝胃不和

ストレスなどによって情志の失調により肝気が停滞して疏泄がうまくいかず横逆して胃をせめることで起こります。

胸から脇腹にかけて痛んだり、ストレス、情動の変動によって悪化したり誘発されます。

傷食

暴飲暴食をすることで意を損傷して発症します。

胃が張ったり、食欲不振となります。嘔吐すると楽になります。

悪心・嘔吐に対する鍼灸治療

悪心嘔吐に対する鍼灸治療は上記の原因をもとにして、胃に関連したツボを刺激することでからだの内部環境を整えるよう施術していきます。

足三里、中脘、内関、公孫、大衝、脾兪、胃兪を多く用います。

とくに悪心に対して特効穴とされているのは、内関というツボです。 乗り物酔いつわり、腹部手術の後、抗がん剤副作用による気持ち悪さなどに効果があるとされています。爪楊枝の後ろで押したり、ピップエレキバンなどを張り付けても効果があります。