手足のふるえ、パーキンソン病について

パーキンソン病は中脳の黒質にあるメラニン細胞の変性萎縮を主病変とし、特徴的症状を呈する神経変性疾患です。メラニン細胞の変性によって神経伝達物質であるドーパミンの分泌が不足するといわれています。

50歳代以上1%の方はパーキンソン病に悩まされているといわれています。

パーキンソン病の症状

パーキンソン病の3大症状は振戦(手足のふるえ)・筋固縮(筋肉が硬くなる歯車様筋固縮)・動作緩慢です。

その他に次のような症状が現れます。

  • 姿勢保持障害:前傾姿勢で肘や膝が軽度に屈曲してしまう
  • 歩行障害:小刻み歩行や、すくみ足、歩行開始困難、突進歩行など
  • 自律神経症状:便秘、起立性低血圧、よだれが垂れる、多汗などの症状
  • 小字症:書いていると字が徐々に小さくなっていく

パーキンソン病の分類

パーキンソン病には中脳の変性からくる特発性のパーキンソン病と脳に微小な脳梗塞(ラクナ梗塞)が原因である血管性パーキンソ二ズムに分かれます。

高齢者の方は血管性パーキンソ二ズムのことが多く、鑑別が必要となります。

  パーキンソン病 血管性パーキンソ二ズム
発症年齢 50代~70代 60代~80代
進行 緩徐に進行する 急激に進行することがある
高血圧症 関連なし 高確率で関連あり
手足のふるえ ふるえが激しい ふるえが少ない
筋固縮 歯車様(手足を伸ばそうとするとガクガクする) 鉛管様(手足を伸ばそうとすると重く抵抗がある)
知覚障害 高頻度で見られる
画像診断 異常がない 多発性の脳梗塞がみられる

パーキンソン病の治療

パーキンソン病の治療には薬物療法が用いられます。レボドパやマドパーといったL-DOPA剤が用いられます。

パーキンソン病の初期の場合は薬はよく効きますが、副作用として薬効の持続時間が次第に短くなるUP-DOWN現象服薬時間に関係なくL-DOPAが効いている時間と効かなくなる時間が入れ替わるON-OFF現象などがみられます。

その他の副作用としては不眠、興奮、幻覚、うつ状態、知能障害、自殺企図といった症状が出ることがあります。

パーキンソン病に対する鍼灸治療

パーキンソン病に対する鍼灸治療は東洋医学的アプローチによって行います。

東洋医学では手足のふるえのことを「手顫(しゅせん)」、「足顫(そくせん)」といい、原因は次のようなものが考えられます。

肝陽化風

突然の手足のふるえ、頭痛、精神的な興奮などの症状がみられます。

精神的なストレスや筋肉質の人に起こりやすく、肝陽が上亢するとともに内風を生じることで手足の筋が動くとされています。

経穴
合谷(ごうこく)
太衝(たいしょう)
風池(きょくち)

などのツボを中心に鍼灸治療を行います。

脾虚風動

手足のふるえが起きたり、起きなかったり、筋力が低下したり、腹痛、軟便、下痢といった症状がみられます。

脾虚に乗じて肝風が発生することで手足のふるえが起こります。

経穴
足三里(あしさんり)
三陰交(さんいんこう)
太白(たいはく)
脾兪(ひゆ)

などのツボを中心に鍼灸治療を行います。

陰虚風動

臨床的には一番多くみられます。緩慢な手足のふるえ、口の渇き、皮膚の乾燥などの症状がみられます。

高齢化や熱病の後期になり、肝腎の陰液が消耗することで、陽気を抑えることが出来ず虚熱を発生し内風することで起こります。

経穴
復溜(ふくりゅう)
照海(しょうかい)
中脘(ちゅうかん)

などのツボを中心に鍼灸治療を行います。

血虚風動

軽度の手足の震え、手足のしびれ、めまい、不眠、動悸といった症状が現れます。

失血性の慢性病や過労による心肝の血虚から内風を生じることで起こります。

経穴
血海(けっかい)
三陰交(さんいんこう)
膈兪(かくゆ)

などのツボを中心に鍼灸治療を行います。

パーキンソン病は軽度の一側性の手足の障害から起こりますが、進行することによって両手両足の運動に困難が生じますし、悪化することで介護がないと寝たきりや車いすの生活になってしまうことがあります。

パーキンソン病初期で鍼灸治療した場合症状の改善が比較的良くなることが多いですので、お悩みの方は早めにご相談ください!!