妊娠中の腰痛について

妊娠中には50%の確率で腰痛が発症します。胎児が大きくなるにしたがって物理的に腰が反りかえるような体勢になるためです。

妊婦のうちの1割は痛みの緩和のためのなんらあの治療を希望されています。

しかし、妊娠中はできるだけ薬物の投与や胎児への負荷となる治療は控えたい時期ですから、鍼灸治療は妊娠中に発症する腰痛の治療法の選択肢の一つとなります。

なぜ妊娠すると腰痛になるのか

妊娠中の腰痛の痛む範囲は腰全体が50%を占めます。続いて腰から臀部が30~40%となります。

妊娠初期から発症する腰痛の原因は

  1. 自律神経の不安定
  2. 骨盤内の血行障害
  3. 骨盤周囲の痛みに対する感受性の亢進
  4. 骨盤の関節や靭帯の弛緩
  5. 姿勢の変化や子宮増大による物理的な圧迫

などの要因が考えられており、これらの要因がいくつか重なることが妊娠中の腰痛の成因となります。

妊娠中の腰痛の鍼灸治療

東洋医学的に妊娠中の腰痛の原因は次のようなものが考えられます。

腎虚の腰痛

慢性的に腰痛が続くことが多く、休息で軽減し、労働で増加します。

体が重い、頭がふらつく、目の疲れ、全身や足腰がだるく力が入らないなどの症状がみられます。

風寒あるいは寒湿の腰痛

寝返りが打てない、じっとしていた後の動き出しが痛いなどの訴えがあります。妊娠による気や血の不足に乗じて、風寒の邪や寒湿の邪が侵襲したことによっておこります。

風寒のじゃの場合は発症が急激で、背中や腰のこわばり、ひきつるような痛みが起こります。また悪寒、発熱、頭痛、肩こりなどの症状がみられます。

腰や体が冷えていると悪化し、体を温めることで一時的に軽減します。

血瘀の腰痛

妊娠中ではない血瘀の腰痛は、打撲や捻挫などの外傷が原因のことが多く、腰部の経絡を損傷して血瘀が凝滞することが腰痛の原因となります。しかし妊娠中に発症する血瘀の腰痛はもともと瘀血体質の人が妊娠することにより、肝・腎・脾などの経脈の気血の滞った 場合に起こると考えられています。

症状としては夜間に刺し込むような痛み、痛みの場所が常に同じなどといった特徴がみられます。

実際の鍼灸治療では腰に強い刺激を加えることはよくありませんので、切皮(5ミリ程度鍼を入れる)や温かい温度のお灸などを多用します。

また手足の末端のツボを使うことで全身の調整を行うことで、腰痛の緩和だけでく、妊娠中の不快な症状(つわりなど)も緩和することも可能です。