逆子の鍼灸治療

胎児は通常産道に対して頭が下の状態にありますが、お尻の方が下にある状態を逆子といいます。専門用語では骨盤位と呼ばれています。

逆子は妊娠21~24週で39.2%、25~28週で30.2%、29週~32週で22%、33~36週で13.6%、37週以降で4.3%の確率で現れるとのデータがあります。

逆子は初産婦と経産婦では初産婦に多いとされています。

逆子は妊娠中期に40~50%にみられますが、妊娠末期では3~5%に激減することから、正常胎位に何らかの機序が存在すると考えられています。その一つに子宮の形態変化があると考えられています。

また胎児自身も胎動することで自己回転し、子宮腔と胎児殿形状が安定する頭位(頭が下の状態)になると考えられています。

逆子の鍼灸治療ではどのようなツボをとっていくのか

逆子の鍼灸治療としては至陰(しいん)が特効穴として用いられてきました。ここは鍼よりもお灸が用いられます。

東洋医学では逆子のことを胎位不正といいます。古典には横産、逆産などとして胎位異常が記載されています。

東洋医学的には次のような原因で逆子になると考えられています。

気虚血虚

虚弱体質で気血が不足しがちな方が妊娠すると、一気に気や血を消耗するため、胎位の変換の力が低下することで発症します。

妊娠後期の逆子や痩せ、皮膚に張がない、息切れ、疲労感などを伴います。

経穴
至陰(しいん)
足三里(あしさんり)
三陰交(さんいんこう)

などの経穴を中心に鍼灸治療を行います。

気滞

ストレスなどで情緒が抑うつし、気滞が生じ、そのために胎児の転位が阻害されます。また寒さによって気の流れが悪くなることでも逆子となります。

季肋部が張ったり、胸苦しさ、精神的抑うつ、ため息、げっぷ、吐き気などを伴います。

経穴
至陰(しいん)
内関(ないかん)
太衝(たいしょう)
合谷(ごうこく)

などのツボを中心に鍼灸治療を行います。

脾虚

脾虚のために水湿が停滞し、湿邪の停滞が胎児の転位を邪魔します。

妊娠後期の胎位不正に、肥満傾向(皮膚にしまりがない)、体の重だるさ、疲労感、食欲不振などを伴います。

経穴
至陰(しいん)
三陰交(さんいんこう)
陰陵泉(いんりょうせん)

などの経穴を中心に鍼灸治療を行います。

逆子に対する鍼灸治療は原則的には適応となります。しかしながら、子宮の奇形、双子以上、重症妊娠中毒症、前置胎盤の場合は不適応となります。

また、臍帯が短かったり、巻き付いていたり、羊水の減少がみられる場合は鍼灸治療を行っても、矯正は困難とされています。

逆子に対する鍼灸治療の効果は高く、ある研究では584例中89.9%の確率で逆子が矯正されたとの報告がります。鍼灸治療3回目までに59%、4回目までに78.5%の確率で逆子は矯正されています。

逆子で困っている方は鍼灸治療をしてみる価値はあると思いますので、お気軽にご相談ください。