高齢者のうつについて
わが国では、高齢化社会がすごいスピードで進んでいます。高齢化に伴い、関節の痛みや内臓の病気など様々な症状に悩まされるようになります。
とりわけ、高齢になると物忘れが多くなるなど認知症のリスクも高まります。
認知症は予防方法や治療など様々なメディアで取り上げられ、私たちの間では理解が進んでいるように思います。しかし同じ精神疾患であるうつ症状やうつ病については、気のせいや年のせいといった理由で見逃されることが多く、周囲に理解されにくく、苦しんでいる高齢者の方も多くおられることと思います。
うつ病の罹患率については25~64歳で4.9%、65歳以上では5.5%、70歳以上では12.1%と年をとっていくのに伴い、うつ病の有病率は高くなる傾向にあります。
高齢者うつの背景
高齢者のうつは加齢に伴い、様々な疾患を併発し、日常生活機能が低下することで、今までできていたことができなるなるといった喪失感をもちやすい精神状態が背景にあります。
また、生活を共にしてきた配偶者との死別、旧友の死亡や入院など喪失体験が増えることによってうつの発症のきっかけとなることもあります。
その他に、退職に伴う社会的地位の喪失、仕事上の人間関係の喪失、収入の減少によって交友範囲が狭まったり、自信を喪失してしまうことなども高齢者うつの要因として考えられています。
高齢者のうつ症状の特徴
高齢者のうつ症状は通常みられるうつ症状である
- 憂うつで落ち込んだ気分や悲壮感
- 興味や喜びの低下
- 睡眠障害
- 食欲不振
- 罪業感や自身のなさ
- 自殺企図
- 疲れやすさ、意欲の低下
- 集中力の低下
- 不安感
- 動作を早く行うことができない
- 神経過敏
といった症状に加えて
- 身体症状を訴えることが多い
- 不安や焦躁感が強い
- 記憶力低下がみられる(うつ病性仮性認知症)
- 大病に引き続き発症する
- 大病の発症に繋がる。要介護になる確率は2倍
という特徴があります。
身体症状としては頭痛や肩こり腰痛から食欲低下や胃の不快感、動悸や胸の痛み、便秘や頻尿などのごく一般的にみられる症状が多いとされています。そのてため年のせいにされ、うつを見落とされるケースが多いです。
また、不安化や焦躁感によりイライラしたり、歩き回ったりすることもあります。記憶力の低下も見られることがあり、認知症と勘違いされることも少なくなく、病院での鑑別が必要となってきます。
がん、心筋梗塞や脳梗塞などの大病のあとにうつ病になるケースも多く、逆にうつ病を持つ高齢者の患者さんは心筋梗塞や感染症にかかりやすいとされています。高齢に伴う鬱状態によって外出や運動、活動する機会が減り、免疫力や内分泌機能の低下をするためと考えられています。
うつ状態をチェックしてみましょう
過去1週間で、以下の質問のうち「はい」にいくつ当てはまりますか?
- 毎日の生活に満足していない
- 毎日の活動力や周囲に対する興味が低下した
- 生活が空虚だと感じる
- 毎日が退屈だと思うことがおおい
- 機嫌よく過ごせる日が少ない
- 将来への漠然とした不安に駆られることがある
- 多くの場合、自分は幸福だと感じることが出来ない
- 自分が無力だと思うことが多い
- 外出したり何か新しいことをしたりせず家にいたいと思う
- なによりもまず物忘れが気になる
- いま生きていることが素晴らしいと思えない
- 生きていても仕方がないと思う
- 活力にあふれていると思えない
- 希望がないと思うことがある
- 周りの人が自分よりも幸せそうに見える
以上の項目で「はい」が
5個以下は正常
6~10個は軽度の抑うつ
11個以上は重度の抑うつ
と判定されます。
高齢者のうつを早期に発見し治療することは心筋梗塞や感染症認知症といった重篤な病気の発症の予防にも綱がりますし、生活の質を高めることにもつながります。
気のせい、年のせいと諦める前に、お気軽にご相談ください。