肩こり
- デスクワークが多い
- 常に肩が重い
- マッサージや整体に行ってもすぐに戻る
- 姿勢が悪いとよく言われる
- 一日中パソコンに向かっている
- 足の冷えが気になる
- 肩こりと一緒に頭痛が起きる
- 目の奥がえぐられたような感じがする。
肩こりがある場合、患者さんの感じる自覚的な不快感は、肩や首の局所に感じる痛みや重だるさ、こわばり感ですが、同時に全身的にもだるさや疲労感などを感じることが多く、肩こりは全身的な不快感や不定愁訴のひとつとして考えたほうがよいことが多いです。
肩こりの原因
- 首・肩・上肢の過度の使用:筋疲労、継続的な筋使用による疲労
- 頚椎や胸椎、肩関節などの問題:これらが二次的に肩こりを引き起こす
- 頭部・顔面諸機関の問題:頭痛・眼精疲労・乱視・顎関節症・耳鳴り等
- 胸部内臓器の問題:喘息・心疾患・肺疾患など
- 腹部内臓器の問題:胃腸・肝臓・膵臓などの不調、婦人科疾患など
- 精神的な問題:悩み・不安・思い込み・イライラなど
- 自律神経の問題:冷え・のぼせ・むくみなど自律神経の不調に併発するもの
頸椎症や鞭うちの後遺症の場合は、頚椎の神経根部の圧迫や斜角筋の緊張によって神経が締め付けられることで起こる神経刺激症状が起こります。
内臓諸臓器の異常は内臓体性反射によって内臓の異常が体の表面の痛みとして感じられるようになります。
精神的疲労・ストレス・睡眠不足による肩こりは心因性などによる筋肉の過緊張(スパズム)起こすことで起こる肩の筋肉の虚血状態(血行不良)、疲労物質の蓄積が考えられます。
肩こりは多くの人が経験する症状ですし、とくに緊急性がないことから放置されることの多い症状です。
しかし、肩こりの中にも緊急性を要したり、早急に対処をする必要がある病気が隠れていることがあるのでいつもと違う肩こりが出た方は場合によっては医療機関にかかることをお勧めします。
肩こりに潜む病気(病院にかかったほうがよい場合)
特にこれといった原因のない肩こりとは違い、病気によって引き起こされる肩こりがあります。
それは狭心症・心筋梗塞にが原因でおこる肩こりと変形性頚椎症の症状として出てくる肩こりです。
心臓の病気によっておこる肩こり
狭心症・心筋梗塞というのは心臓の病気です。
心臓は収縮と弛緩を繰り返すことによって全身に血液を送るポンプの働きをしていますが、心臓もどこかから栄養をもらわなければ動くことができません。その心臓に栄養を送っているのが冠状動脈という血管です。
その冠状動脈が詰まり、心臓の筋肉へと血液が送られない状態が狭心症や心筋梗塞です。
その時に出現する症状が狭心痛です。
狭心痛は胸を締め付けられたり、圧迫されたり、焼けるように熱くなる、もやもやする、むせぼったくなるといった症状が起こります。
前胸部や胸骨の裏側などの胸の周囲だけではなく、肩や首・腕・背中などにも痛みが放散するためこれを肩こりとして感じてしまうということです。
狭心症は一過性に心臓の筋肉に血液がいかないだけですが、心筋梗塞は心臓の筋肉に血液がいかないことで心筋が壊死しますので命の危険があります。
狭心症の場合は狭心痛は数分から長くても30分で痛みが治まります。心筋梗塞は30分以上痛みが続きます。
また、心筋梗塞の場合は前駆症状といって半数に心筋梗塞が起こる数週間前に狭心痛が起こることがあります。
肩こりが心筋梗塞のまえぶれだったという経験
10年位前まだ働きだして1年くらいの話ですが、60代の患者さんが左の肩がやたらこっているといって来られました。だいたいいつも肩がこっていますので、いつもの肩こりかと思って施術しました。次の日にすごく怒った表情で来院し、「昨日施術を受けたが良くなるどころか余計痛くなったじゃないか」おっしゃいました。
かなり痛いとのことで、その時は僕の施術が悪くて症状が悪化したのではないかということで、院長先生が施術をし帰っていただきました。
その数日後にその患者さんは椅子に座ったまま心筋梗塞で亡くなられたと別の患者さんから聞かされました。その時あれは肩こりではなく狭心痛だったのだと思いました。
多くの場合、肩こりを狭心痛だと見抜くことはほぼできませんが明らかにいつもと違う肩こりが出ている場合、肥満・高血圧・高脂血症・糖尿病などの持病がある方は頭の片隅に入れておいたほうがいいかもしれません。
頚椎ヘルニア・変形性頚椎症による肩こり
頚椎ヘルニアとは頚椎にある椎間板の髄核が外に飛び出て首の神経を圧迫することで手のしびれなどの知覚障害、手に力が入らないなどの運動障害を起こす病気です。
変形性頚椎症とは老化によって頸椎の変形が起こり頸椎に骨棘(骨の棘)ができたり、椎間板の変性や硬化などによって首の神経が圧迫されたり、首を支えている筋肉や関節などの異常が原因で肩こりや腕のしびれなどを引き起こす病気です。
とくに首の第4神経、第5神経が障害を受けると首の後ろから肩、上腕にかけて痛みや疼きなどの症状が出ます。
心筋梗塞のように緊急性があるわけではありませんが、放っておくと神経が圧迫され痛みがなかなか取れなくなります。ひどい場合は日常生活に支障をきたす場合があります。
また、腰とは違い神経や血管、筋肉が複雑に入り組んでいるため、手術をするのも難しくリスクが伴います。ですから、症状を悪化させる前に首の牽引や体操、温熱療法、鍼灸治療などなんらかの対策をすることが大切です。
肩こりはつい放置してしまいますが、いつもと違う肩こり、おかしいなと感じたら、医療機関や鍼灸院などに相談するようにしてください。
肩こりの改善方法
様々な原因で起こる肩こりですが、体は筋肉が凝り固まってしまって血流が悪い状態にあります。
これを改善するための手軽な方法として肩の筋肉を温めることとストレッチがあげられます。
肩の筋肉を温める方法はシャワーを長めにあてたり、最近では電子レンジで温められるゲル状のものがドラッグストアなので売られているので、それが手ごろではないかと思います。
肩のストレッチは肩を上にすくめたり引いたり、首を斜め前に倒すなどのストレッチをすると良いでしょう。
間違った肩こり対処法
鍼灸院に肩こりで来院される患者さんの中に肩や首が表面からカチカチな方がおられます。
これだけ、肩が固いと指で押さえるとさぞかし痛いだろうと「押さえたら痛みますか?」と確認すると「触られている感覚はあるがあとはほとんど感じない」とおっしゃいます。
「今まで、強いマッサージを受けてきましたか?」と聞くと「ゴリゴリやってもらうのが好き」とか「強いマッサージが」好きといった答えが返ってきます。
「他には木の棒のほうなものを使ってグリグリしていた」という方もいらっしゃいます。
いったんこのように固くなってしまった肩や首をほぐすのは容易ではありません。
肩たたき、グリグリとしたマッサージや強いもみほぐしは皮膚や筋肉の繊維を痛めます
グリグリとしたマッサージや強いもみほぐしをすることで起こることは、大きく2つあります。
その2つとは
- 筋肉や皮膚の組織を傷つける
- 痛みに対して慣れる(鈍感に)なる
ということです。
1.筋肉や皮膚の組織を傷つける
グリグリとしたマッサージや強いもみほぐしをすると筋肉の繊維や皮膚の組織を傷つけます。マッサージをされた後に皮膚の突っ張りを感じたり、筋肉のだるさや痛みを感じた場合がそれにあたります。この感覚を『よくやってもらった』と感じる方もいますが、これは筋肉や皮膚を傷つけているのにすぎません。出血こそしませんが、目に見えない範囲で体は傷ついています。
その後その傷は治ります。しかし、治る際に組織の肥厚(分厚くなる)がおこったり、瘢痕(かさぶた)化することで組織は前より硬く柔軟性がなくなります。強いマッサージを繰り返すことで、皮膚と筋肉が硬くなっていきます。あまりに硬くなると俗にいう指が入らないという状態になります。
2.痛みに対して慣れる(鈍感に)なる
最初は痛いと感じていたマッサージも何回も繰り返していくと痛みに対して慣れが出てくるため、どんどん強くしてもらう方がいます。ある程度の強さまでなら問題ありませんが、あまり強くすると筋肉や皮膚を傷める原因になります。また、施術者が強くしようとして力任せにもんだりした場合、手技が雑になることは大いにありえます。
いったん筋肉や皮膚がカチカチになってしまったら
いったん筋肉や皮膚がカチカチになってしまったら、ほぐすのは容易ではありません。とくにマッサージやもみほぐしなどで硬くしてしまっているため、よほどうまいことをしない限り、改善させていくのは難しいでしょう。
そこで、非常に有効なのが鍼やお灸です。
鍼はマッサージなどとは違い筋肉に直接アプローチができるため、少ない刺激であっても十分に筋肉に影響を与えることができます。また、硬くなっている筋肉の表面にある筋膜に鍼先が当たると「ズーン」と奥に響く感覚が起きることがありますが、これは強いマッサージが好きな方には好まれる感覚です。
また、お灸をすることで皮下血流や筋血流がよくなりますので、老廃物を流したり、柔軟性を高めることができます。
肩たたきやグリグリとしたマッサージ、強い刺激が好きな方は刺激が今より強くならないよう注意してください。
肩こりの東洋医学的な見方
一言で肩こりといっても肩の凝り方は一人ひとりによって様々あり、凝る場所も肩の上の方が痛かったり肩甲骨の間が痛かったりと異なります。東洋医学的な診断では、肩こりの病態を気滞、気虚、湿痰、血瘀、側頚部の経筋肉の異常、後頸部の経筋肉の異常、腎虚、外感に分類することができます。
気滞の肩こり
肩こりはストレスによって増悪し、肩上部から肩全体にかけて、張ったような、つまったような感じがします。抑うつかんや嫌なことがあると肩がつまってきて重苦しく苦痛になります。喉がつかえた感じを伴うこともあります。また肩の皮膚をつまんでみると皮膚が腫れぼったくなって非常につまみにくかったり、ピリッとしたような痛みを自覚することがあります。
気虚の肩こり
気の不足によって、痛いような感じを自覚します。初期には肩甲間部のこり感を感じますが、悪化すると深部のズキズキ感が生じます。気虚がベースであることから、気を遣い過ぎたり、人ごみに出たり、くたびれたりすると悪化します。
肩こりのある場所を触ると皮膚表面にははりがなく、汗ばんだ感じを触知します。深部は硬結が生じてゴリゴリしていたり、ひどい場合は、骨や枯れた木の枝のような感覚のものを触れることがあります。
温めることで改善することが多いです。
湿痰の肩こり
血瘀の肩こり
肩こりの場所を触るとゴリゴリの塊のようなものを触れることが多いです。
側頚部の経筋の異常の肩こり
首に負荷をかけたり、首を伸ばすと動作時痛、つっぱり感を自覚します。側頚部の筋肉の使い過ぎや、雨天、冷えることによって悪化します。
後頚部の経筋の異常の肩こり
腎虚の肩こり
首の使い過ぎ、悪天候、ストレス、過労、長時間の同一姿勢などで悪化します。
外感の肩こり
肩こりの症例
肩こり 症例1 20代 女性 初診:2016年6月23日
肩こり・腰痛・左肩の痛み
就職し事務仕事を始めたころから、肩こりと腰痛を自覚するようになる。仕事中も肩のこりや腰のだるさが気になるため、早めにケアをしておきたいということで来院。
左肩は昔運動をしていて、肩を痛めてから、肩の前が痛む。
そのほか、足のむくみや目の疲れ生理痛などがある。
【所見】
僧帽筋、脊柱起立筋、腰方形筋の緊張が強い。上腕骨の結節間溝部に圧痛。
そのほか、腰部の冷え、下腿部の軽度の浮腫を認める
【施術方針】
僧帽筋や脊柱起立筋、腰方形筋の緊張部位に刺鍼、お灸をし、緊張を緩和させる。結節間溝部は慢性的な炎症があるため、浅く置鍼をすることで消炎効果を狙う。
足の冷えやむくみなどがあることから、東洋医学的に腎陽虚として、体質改善の鍼灸を行う。
【鍼灸治療でもちいる経穴】
復溜・経渠・三陰交・足三里・豊隆・腎兪・志室・魚際・結節間溝部・巨骨・肩髃・天柱・風池・肩井・そのほかの肩周囲の反応点
【経過】
同様の鍼灸治療を6月23日、6月30日、7月15日と行い、肩こり・肩関節前面の痛みは消失。腰は後屈時にやや痛みが出るもののほとんど気にならなくなった。
その後2か月に1度来院。
【コメント】
肩周辺の筋緊張のあるツボをしっかりととることで比較的はやく症状が改善することができた。また、体質を改善するツボへのお灸なども功を奏したと考えられる。
当院の肩こり施術では、肩の痛みを和らげることはもちろんですが、体内環境環境を整えることで、より効果的に再発しにくいカラダへと体質改善することを目的としています。